石手内科通信
子どものこころと発達⑥お薬の治療について
投薬について
今回はいつもと少し違った話題を提供します。
投薬治療についてです。
児童精神科では、強い易刺激性、衝動性、興奮、攻撃性、不眠、混乱など、生活に大きな支障が出ている症状を和らげる目的で使うことがあります。
精神科系の薬については、大きく分けて以下のものがあります。
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
- ADHD治療薬
- 睡眠薬
今回は、特によく使われる抗精神病薬について概説します。
抗精神病薬について
子どもの治療において、よく使われるものが、こちらになります。
ただ、子どもに薬を飲ませることに心配されるご家族も少なくありません。
以前のブログでも書いたように、長期間飲まなければいけない、という心配はやはりあると思います。
他によく聞くことに、
- 副作用のイメージが強い
- 成長に影響がでるかもしれない
- 薬が性格を変えるかもしれない
- 効果を感じにくい
などが理由として挙げられます。
薬は医師の指示で飲んでいただくものなので、医師側も薬のことを熟知する必要があります。
現代の医学はエビデンスに基づく医療とされており、添付文書やガイドラインなどの基本情報はもちろん、様々な知識をもとに、患者さんに最も適したお薬をすすめるのも医師の務めだと思います。
今回は、抗精神病薬について、よく説明する内容をこちらでもご紹介します。
子どもに認可されている抗精神病薬
実は、子どもに適応(臨床試験が行われ、安全性が確認されている)がある薬はそんなに多くありません。

ルラシドンはまだ認可されるための試験をしているところですが、今後の予定もあるので記載しています。
まず、投薬される診断名ですが
- 統合失調症
- 小児期自閉スペクトラム症(ASD)における易刺激性
の2種類になっています。
抗精神病薬はもともと統合失調症に対する薬なのですが、その統合失調症に対しても適応があるのは2026年現在はブロナンセリンのみです。
そして、小児期ASDのイライラ感に対して、アリピプラゾールとリスペリドンのみが適応になっています。
ここで、あまり知られていないことですが、上記2つは小児期ASDに対して適応があります。
実は、18歳を超えると、ASDの易刺激性に対しては適応外使用になります。
実臨床では続けて利用することが多いのですが、薬の説明書では上記のようになっているんですよね。
また、医薬品の添付文書では、一般に「小児」は7歳以上15歳未満として扱われます。
そのため、15歳以上では成人用量の考え方に近づく薬もあります。
ただし、実際の処方では年齢だけでなく、体格、症状、副作用の出やすさを見ながら慎重に調整します。
非定型抗精神病薬
そして、よく使われる抗精神病薬はほとんどが非定型抗精神病薬になります。

こちらの8種類になります。基本的な適応症は統合失調症ですが、その他の疾病にも適応があるものもあります。
その中でも、似たような効能をまとめて、3種類に分けています。
- ドパミン受容体を強く遮断:リスペリドン、ブロナンセリン、ルラシドン
- ドパミン受容体を部分的に遮断:アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール
- ドパミン受容体を弱く遮断+他の様々な受容体に作用:クエチアピン、オランザピン、アセナピン
になります。
どれがいいか、患者さんの病状や困っている症状に合わせて利用します。
先ほど書いたように、15歳以下であれば、使う薬はかなり限定されます。
ただし、時には診断名が確定していなくても、症状が強く出ている場合は、一時的に薬をお勧めさせてもらうこともあります。
抗精神病薬は有効な薬ですが、副作用の確認も重要です。
眠気、だるさ、食欲増加、体重増加、便秘、手の震え、そわそわ感などが出ることがあります。
また、薬によっては血糖や脂質、プロラクチンなどに影響することがあるため、必要に応じて体重測定や採血を行いながら慎重に使用します。
当院では、抗精神病薬を使う場合でも、何の症状を軽くしたいのかを明確にし、少量から開始します。
効果と副作用を確認しながら、必要最小限の使用を心がけます。
まとめ
薬の治療をしましょう、と言われると、不安を感じる保護者の方は少なくありません。
ただ、目の前の子どもが、強い易刺激性、興奮、衝動性、不眠、混乱などにより、本人や家族の生活が大きく崩れている場合に、症状を和らげる目的で使用することがあります。
一方で、抗精神病薬は「困りごとをすべて解決する薬」ではありません。環境調整や心理的支援などを組み合わせながら、必要な場合に補助的に使用するものです。
当院では薬を使う場合でも、本人とご家族が納得できる形で、治療全体の中で位置づけを考えていきます。
すでにお薬を内服されている方についても、ご相談いただけます。
薬を急に中止するのではなく、それぞれの薬の目的や効果、副作用を確認しながら、今のお子さんにとって必要な治療を一緒に整理していきましょう。