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石手内科通信

子どものこころと発達⑤不登校への個別的対応と放デイについて

石手内科通信

不登校について②

前回は不登校についてブログを書きました。今回も医療における不登校に関して、少し深堀りしていきます!

実は、児童精神科医の中で不登校の患者さんを診察することはとても一般的であります。
日本児童青年精神医学会「教育に関する委員会」のお仕事で、不登校に関するシンポジウムが2025年学会で開催されたので、そこで得た情報をこちらでもご紹介します。

 

不登校生徒の多様な学びの場

近年、文部科学省は不登校児童生徒の多様な学びの場を、急速に整備しようとしています。
具体的なことは、以下に示す内容を推進しています。お子さんの状態に応じて、利用する支援は変わります。

上記は全国における発表内容なので、愛媛に置き換えて考えてみます!

①校内教育支援センター
言葉が聞きなれない、という方もいらっしゃるかもしれません。
愛媛でもありまして、校内スペシャルサポートルームと別名もあります。
学校によっては、サポートルームとか、〇〇教室、という言い方かもしれません。
自分のクラスには入れない、気持ちを落ち着かせてリラックスしたい、などで利用できる、学校の空き教室等を活用した居場所のことです。
文部科学省では施策の一つとして各校への設置を促進しているので、在籍校に聞いてみてもいいと思います。

②学びの多様化学校(不登校特例校)
こちらは聞いたことがない方も多いかと思います。
特別な教育課程で、授業数が少な目で体験型活動が多く、生徒数は少な目、などの特徴があります。
全国の学びの多様化学校についてはこちらです。
なんと、愛媛にはありませんでした。
高校で不登校対応している学校もありますが、教育課程を変えているわけではない、ということでしょう。

③家から出ることはできる
この場合に示されている教育支援センターは市町が運営するフリースクールに近いもの、という理解でいいと思います。
そしてフリースクールも松山市だけではなく、多くの地域にできております。

④家から出ることができない
この場合、完全なオンラインか、アウトリーチ支援になります。
愛媛の場合、愛媛県教育支援センターが行っているメタサポセンターが、オンラインでのメタバースを作っております。
同機関にてアウトリーチ支援を行っています。
筆者は前述のシンポジウムで世界初のVRメタバース不登校支援プログラム「ぶいきゃん」を作った水瀬ゆず氏の話も聞きましたが、愛媛県は全国的にもかなり先取りした動きをしていると感じました。実際、メタバースがうまく合った患者さんもいらっしゃいました。

 

医療機関が関わる支援

医療機関が関わる支援としては、患者さんである子どものこころの状態に応じて、「この辺りを行ってみては?」と提案することがあります。
上記のように、状態に応じてわかりやすい支援場所が設定されておりますが、やっぱり決断や利用は不安になるものです。
そのような不安に対し、どうするのが最適なのかを一緒に考える診療をしております。

その他にも、医療機関が関わる支援として、放課後等デイサービスや、精神科訪問看護があります。
これも、前述のシンポジウムでも取り上げられており、全国的にも使われるアプローチになっています。
今回は放課後等デイサービスを少しご説明したいと思います。

 

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、2012年4月に児童福祉法に基づいた福祉施設として誕生しました。
児童デイサービスはもっと昔からあったのですが、放課後等デイサービスが新しく仕組みとしてでき、年齢区分も6~18歳になりました。
児童福祉法による、障害のある学齢期児童が学校の授業終了後や学校休業日に通う、療育機能・居場所機能を備えた福祉サービスです。
「放デイ」と略す子が多いですね。
余談ですが、筆者が神奈川県に国内留学していた2015年は、横浜市や川崎市の大きな駅の近くにいくつかあり、まだ愛媛県にはほとんどなかったと記憶しています。
あれから10数年で、びっくりするくらい増えましたね。

ちなみに、学童保育とは違います。学童保育は、主に保護者が日中家庭にいない小学生の児童に対する、授業終了後の適切な遊びや生活の場です。

放デイでよく誤解を受けるのが、対象は児童福祉法における「障害児」なので、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)が該当します。
発達障害児しか放デイには行けないわけではありません。医師でも誤解している方がいます。
精神障害も含まれるので、うつ病、不安症、適応障害などの診断を受けている子どもも対象になります。

また、放デイでは昨今、重視されるポイントが変わってきております。
具体的には5領域といい、

  1. 健康・生活
  2. 運動・感覚
  3. 認知・行動
  4. 言語・コミュニケーション
  5. 人間関係・社会性

を踏まえて支援することが求められています。
特にコミュニケーションや人間関係に関してなど、大事なポイントを逃していない放デイは、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを積極的に取り入れています。

また、放デイ事業所の特徴に応じて2つに分類されることになりました。

  1. 総合支援型:本人や家族のニーズに応じ、総合的な支援を提供
  2. 特定プログラム特化型:専門的な療育(運動や学習など)に特化して提供

です。専門的な療育が始まっております。

 

なぜ放課後等デイサービスが変わったのか?

実は、放デイは

  • 「ただ遊んでいるだけ」
  • 「宿題を見ているだけ」
  • 「預かり保育と変わらない」

事業所が問題視されていました。
一方で、専門色を取り入れすぎて、

  • 「まるで絵画教室」
  • 「まるで塾」
  • 「まるでピアノ教室」

になってしまい、「公費で行ける習い事」と、批判される的になっていました。
そこで、令和6年に前述のように改定されたのです。
本人支援の5領域は、「何をやったか」ではなく「どの発達課題にアプローチしたか」を明確にしなくてはいけません。

実際、診療でも「どこの放デイが良いのでしょうか」という質問を受けることがあります。
後述しますが、放デイの詳細については、多くの医師はあまり知らないと思います。
ただ、患者さんと関わっていると、放デイによって大きく成長したお子さんも見てきました。
一方、何年通っても目標が曖昧なまま、利用が続いているケースも正直あります。

 

報酬から見る放課後等デイサービス

実は放課後等デイサービスは、利用者から見ると月数千円程度で利用できることが多い制度です。
しかし、その費用の多くは公費で支えられており、 社会全体で子どもの支援を支えている制度です。
そのため、「とりあえず預かる」だけでは制度として成り立たなくなってきています。
そこで、令和6年に報酬改定があり、いくつかの点数加算がありました。

  1. 専門的支援体制加算:専門人材による個別・集中的支援の計画的な実施に対して評価される。専門職はOT、PT、STや心理士。
  2. 延長支援加算:平日は3時間、学校休業日は5時間の発達支援を行うことに加えて、その前後に預かりニーズに対応した支援を計画的に行った場合に加算。職員2名以上を配置する必要がある。
  3. 関係機関連携加算:放デイを利用している子どもの関係者と連携して、サービスの質を高めていることに対する加算。関係者同士で情報共有を行い、子どもに対する理解を深めていきます。
  4. 強度行動障害児支援加算:道路への飛び出しなど危ない行動や、暴力等、周りの人の生活に影響を及ぼす行動が著しく高い頻度で起こる強度行動障害を持つ子どもに対して、研修修了者がサービスを提供した時に算定することができる加算

1の専門職がいれば、様々な療育プログラムを作ることが可能です。
2は、不登校の子が放課後ではなく、早めに放デイに参加できます
3は関係機関によって報酬が違い、学校の方が医療機関より報酬が高い仕組みになっています(悲しい)。
4の強度行動障害児支援加算をとっているところはとても貴重で、強度行動障害児はなかなか馴染める放デイがありません。
飛び出しとか危険な行動を起こす子どもに、安全を配る仕組みが必要なので、この加算をとっているところが増えたらな、と思っています。

あと、大きく注目されているのは、時間区分が新たに導入されたことです。

改訂前では、授業終了後と学校休業日でそれぞれ報酬単位が設定されており、授業終了後は604単位、学校休業日は721単位となっていました。
それが今回の改訂によって、授業終了後と学校休業日という区分けは廃止され、利用する時間によって3つの区分が新たに作られました。

時間だけで決めるのはよくないですが、これを見ると、「30分」が一番効率いい気がします。
さすがに30分しか実施しない放デイは聞いたことがないですが…
あと、30分~1時間半と、1時間半~3時間の報酬の差がほとんどないです。350円の違いです。
収益だけ考えると、30~60分で交代制という形が、最も効率がいいかもしれません。
実は、精神科医療でも「精神療法」というもので、似たような制度があります。
5分診察したら、5分でも20分でも診察代は変わりません
そうなると、5分で患者さんの診察が終わる精神科クリニックが多くなる、という問題に似ています。
ただ、患者さんにお話を聞いてみると、じっくり2時間以上の預かりで、プログラムも実施している、という放デイがほとんどですね。

放デイは30分でも1時間30分以下なら同一報酬なので、短時間利用のところもあるかもしれません。
その一方で、支援内容や学校・医療との連携、5領域に基づく支援計画が求められるようにもなっています。
そのため、時間だけではなく、「どのような支援をしているか」を確認することが重要かもしれません。
クリニックも放デイも、内容重視、というところかもしれませんね。

 

医療機関と放デイ

では、最後に、放デイの利用で医療機関が最も必要になることをお伝えします。

④にあります、診断書は当院で作成できます。
放デイの利用は「障害児」が原則になっていますので、その証明にも必要なことです。

全国学会であったので、全国各地の話題がありましたが、全国一致の話題で、
利用開始後に放デイと医療機関との連携はほぼないというところでした。
ただし他の都道府県では、医療機関が福祉法人も作って放デイを運営している、というこれ以上の連携はない、すごいところもありますが。
愛媛県の場合は、医療側が放デイに見学を申し込んだりしない限りは、放デイのスタッフと出会う機会はないと思われます。
そんな中でも、当院では患者さんのことで相談・連携している放デイも、少ないですがあります。

お互い違う立ち位置ですが、子どもたちの未来のために、支援をしていけることを願っています。